がんは小さくなっても・・・
前回の真のアウトカムで評価しているかにつづきます。もう少し、真のアウトカムについて考えてみましょう。
がん治療の効果判定
がんの治療の場合には、どのような項目で効果判定をするでしょうか。
治療によってがんが小さくなったのか、でまず検討されると思います。しかし、がんが小さくなっても、寿命が延びるとは限りません。
骨密度と骨折の関係と同じで、実はがんは小さくなったが死亡率は多くなっていた、という研究はたくさんあるのです。
この例では、がん治療の効果を判断する指標としては、
- 代用のアウトカム:がんの大きさ、腫瘍マーカー
- 真のアウトカム:がん死亡率、総死亡率、治療による有害事象
となるでしょう。
死亡率は死なないとわからない
「治療で死ぬかどうかは死んでからでないとわからないだろう?それでは遅いんだ。だからがんが小さくなったかどうかで判断するんだ。」
この意見はごもっともです。
臨床現場では日々、治療を進めながら代用のアウトカムを使って判断しています。目の前の一人の患者が亡くなったかどうかでその患者の治療方針を決めていくことは原理的に不可能です。(あたりまえですが。)
代用のアウトカムによる治療効果の判断は、臨床現場で慣れ親しんだ方法といえるでしょう。
ところが、代用のアウトカムはひとりの患者の治療効果を判断するのには使えても、治療そのものの効果を判断するのには向いていないのです。
治療そのものの効果を判断するには、すべての治療が終わり、ふりかえって結果がどうだったのか、という判断の仕方になります。その意味では、真のアウトカムは研究向きの指標といえるのかもしれません。
あるいは、少し前向きに表現すると、真のアウトカムは次の患者に役立てることができる指標といえるでしょう。
- 代用のアウトカム:ひとりの患者の治療効果を判断するには有用。
- 真のアウトカム:治療そのものの効果を判断するには有用。
代用のアウトカムの論文はよまない
代用のアウトカムの論文はよまない。これは、数多くの論文が発表される中、効率よく論文を選ぶ極意のひとつとされています。
これは、代用のアウトカムで効果がみられても、真のアウトカムで効果がなかった、という研究が多くあるからです。
結果にだまされないよう、読者にもいさぎよさが求められる時代です。
CMECジャーナルクラブはこのような代用のアウトカムのみの論文は基本的に採用されていません。だからこそ忙しい臨床家が、効率よく情報収集するのに適した情報源である、といえるでしょう。
まとめ
- がんは小さくなったが患者は亡くなった、では困る。
- 代用のアウトカムは臨床現場で慣れ親しんだ方法。
- あえて代用のアウトカムの論文はよまない潔さが必要。
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